1 year ago
雑草や草木が生い茂った荒れ放題の元耕地「耕作放棄地」。農業従事者の高齢化や離農などで全国的な広がりを見せている耕作放棄地の影響で、農業産出額3位を誇る千葉県も大きな打撃を受けている。現状は厳しいが、同県木更津市ではユニークな挑戦が行われている。恵みの大地は輝きを取り戻せるか。(田中佐和)
厳しい現状
耕作放棄地は以前耕地だったが1年以上作物を栽培せず、今後も耕作する予定のない土地を指す。千葉県の場合、耕作放棄地は全国ワーストに近い1万7058ヘクタール(農林水産省「平成17年農林業センサス」より)で、その面積は年々増加傾向にあるという。
増加の理由は、(1)高齢化に伴う人手不足や離農(2)山間部など土地条件の悪さ(3)農産物価格の低下-などが挙げられている。
また千葉県では企業誘致の遅れなどから、東京湾アクアライン活用拠点である木更津地域の開発予定地の一部が“耕作放棄地化”しているのだという。
こうした土地は、病害虫の発生やイノシシなど野生動物のすみかになる恐れがあるほか、産業廃棄物の不法投棄現場になったり、痴漢などの犯罪に悪用されることもある。
耕作放棄地は、農業だけでなく市民生活にも影響する深刻な問題とされている。
国も今年度から「耕作放棄地再生利用交付金」(千葉県分3億7500万円)をはじめ、土地の利活用を推進している。しかし交付金の対象者は限られ、「引き受け手がなかったり、所有者が土地を手放さないケースが多く難しい」(県農村振興課)というのが現状だ。
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その一方で、草刈り程度の整備で耕作再開が可能な土地(2228ヘクタール)を中心に、耕作放棄地を利活用する動きが出てきている。
山武市では外食大手「ワタミ」(東京都)と地元農家が契約し、店で提供する有機野菜の栽培に乗り出している。また富津市では「そば」を地域の人たちが共同で栽培し、収穫後にそば打ち体験を行い、交流も深めている。
耕作放棄地の問題解決には、資金や労力の負担が欠かせないが、地域や企業が協力・連携することで、新たな可能性も見えてくる。
新たな試みの胎動
「米より味が落ちるというイメージがあったが、おかずにすればこんなにおいしくて、おもしろい」
昨年6月、木更津市茅野の農産物加工業「糸の里山」を営む小川均さん(47)は新鮮な驚きを味わった。
「雑穀おかずを作ろう」と提案したのは飲食料品卸売業「グッチートレーディング」(同市真里谷)の川口吉彦社長(51)ら。周囲の田んぼが“耕作放棄地化”していくことに焦燥感を抱いていた小川さんは、川口さんらと出会って「休耕田で雑穀を栽培する」という新しい取り組みを始めた。
雑穀栽培は昨年、農林水産省の「農商工等連携事業」に認定されたことを受け、周囲の農家と協力し、耕作放棄地約9900平方メートルの整備、作付けを開始。本格的な商品開発が始まった。
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「もちきびコーンカルボナーラ」「高キビポロネーゼ」など、完全無添加の雑穀おかずは現在約10種類。生の状態で袋詰めされ、温めることで袋の中で調理できる。
和風味付けの「アマランサスパスタ」は食感がたらこパスタにそっくりで、弾力のある“つぶつぶ”がくせになりそうとの評判も。
比較的栽培が簡単な雑穀だが国産品は希少で、市場価格も米の3~4倍と高い。川口さんは「全国的に消費されるようになれば価格も下がって安定するのでは」と、普及に情熱を燃やしている。
川口さんの開発メニューは千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた国際食品展「FOODEX JAPAN 2010」に出品された。会場では「想像以上においしい」との反応も寄せられ、普及に手応えを感じている。
「耕作放棄地」は光を当てれば再生する“生きた土地”。アイデアと努力をもって立ち向かえば新しい価値を生み出す力を秘めている。
